^291）カナザワ展示力実験

11月2日から16日まで展示力合宿という展覧会が開かれた。展示力合宿は、全国から26名の美大生あるいは若い美術関係者が金沢に集結し、アートグミと箔一ビルの二ヶ所で展示を試みるものだ。しかし、この展覧会はスタンフォード監獄実験やミルグラム実験を彷彿とさせるものとなった。

展示を二箇所で行う理由は、二つの対照的な展示を作りあげるという目的があるからだ。一つ目のアートグミでは、発話や目配せといったコミュニケーションを排除した展示を展開する。二つ目の箔一ビルでは、ミーティングを含んだコミュニケーション主体の展示を展開する、〝つもりだった〟ようだ。

つもりだった、というのは、アートグミでの展示が原因でコミュニケーションが断絶し、崩壊したからだ。どういうことかというと、アートグミでは、作業者となるアーティストと審判となる運営に恒常的に分かれ、審判は作業者が規則を遵守しているかを監視する。これを繰り返すことによってそこに役割（＝ヒエラルキー）が生まれ、関係性が歪み始めたのだ。

作品作りは兎も角、統一性が要請される展示会は、ある程度成熟した社会の上でしか成り立たないのだろうか。だからといって服従するのもまた違うだろう。そのような服従に抗うことこそが、アートの原動力となるものだ。今回の展示は、参加者にとっていい経験になったのではないか。

なお、ぼくは完全な第三者であった。

2023-11-22