255)氷のごとく冷徹なる理性的行動
早川千絵監督の『PLAN 75』(2022)をアマゾンで見た。折しも成田悠輔の「集団自決」発言が話題になってからの公開だ。
『PLAN 75』は、75歳以上の高齢者が、安楽死の権利を得ることができる制度が施行された日本を描いている。安楽死の手続きは簡潔で、本人が意思を示せば誰でも簡単に安楽死を選択でき、さらには実施日までのサポートも手厚く行われる。
なるほど、近年安楽死を導入している国は増加している。ただし、厳格な基準を用いてだ。一方、『PLAN 75』の安楽死は自由意志にみせかけたポストモダン的な強制である。つまり、弱者が安楽死を選択するよう、社会のシステムが仕向けるのである。作中では、職が見つからない、賃貸契約ができない、といった弱者が安楽死を望み、サポートは思い留ませないよう振る舞う。金持ちからするとほぼ無縁の制度なのだ。
成田悠輔の「集団自決」の問題点は、その対象が弱者になってしまうことだ。なぜなら、この議論を進行するのが、(本来は集団自決の対象である)老害入りかけのネオリベ連中だからだ。発言元である「【成田悠輔×堀江貴文】高齢者は老害化する前に集団切腹すればいい?成田氏の衝撃発言の真意とは」を見ればその対象が滲みでてくると思う。
もし、成田が具体的な人名や組織名を挙げたなら、その上で改めて評価する準備があるので、是非とも具体例を挙げてほしい。
2023-02-27