250)OSSは簡単ではない
Linuxで用いられる日本語IMEの一つにmozcというものがある。mozcは、google日本語入力から派生したOSS(open source software)、いわゆるオープンソースのことだ。そして、今回そのmozcの「拡張辞書」であるmozc-utが公開停止された。
公開停止にいたる流れは、centraさんの「mozc-utの公開の終了といろいろについての所感」に詳しく書かれている。要約すると、mozc-utは、OSSライセンスが複数組み合わさっており、ライセンスが正しく運用されていない可能性がある。したがって、mozc-utをディストリビューションに組み込むのは難しい、という指摘だ。それを受けた作者がmozc-utの公開を停止した。
作者がへそを曲げたようにも見えるが、それは仕方のないことだと思う。というのも、OSSは高度な知識と技能が必要であるのも拘らず、作者に対するリターンがあまりにも少ないあるいはないからだ。OSSから(有料の)製品を作る企業やエンドユーザーの中には、OSSを便利な無料ソフトくらいの認識しか持たない人も少なくない(結果的に、OSSは新自由主義に利用され、また加担している形になる)。
OSSについては詳しくないが、open source initiativeによると、OSSを名乗るためには、次の10個の定義を満たす必要がある(OSSライセンスはいくつもあるが、おそらくこの定義を包括している)。
- 再頒布の自由
- ソースコード(「ソースコード公開」も含む自由な利用)
- 派生ソフトウェア
- 作者のソースコードの完全性(integrity)
- 特定人物・集団に対する差別の禁止
- 利用する分野(fields of endeavor)に対する差別の禁止
- ライセンスの分配(distribution)
- 特定製品でのみ有効なライセンスの禁止
- 他のソフトウェアを制限するライセンスの禁止
- ライセンスは技術中立的でなければならない
OSSライセンスは複雑で、専門書が出てるほどである。つまり、OSSプログラマーにも拘らずOSSライセンスに詳しくない、という状況はさほど珍しいことではない。ちなみに、ぼくが公開しているプログラムは、無料かつソースコードを公開しているが全てOSSではない。
しかし、普段からオープンソース、オープンソースいってる人や企業がプロジェクトを引き継げば解決するので、是非引き継いで欲しい。
2023-01-13