248)ワキモトさんを訪ねて
ワキモトさんとは、美大で飼って(住み着いて)いる猫の名前である。これまでにも何度か探したが会うことは叶わなかった。勤務最終日、この日はワキモトさんに会える最後のチャンスだ。閉室作業をしたその足で、ワキモトさんを探しに向かった。
学生が作ったと思われるワキモトさんの家を覗いてみたが不在のようである。どこか温かい場所に避難しているのだろうか。辺りを見回してみると、かわいらしい、しかし、さほど時間が経っていないであろう足跡と香箱座りの痕跡を見つけた。どうやらそう遠くには行ってなさそうだ。
ワキモトさんはまだ近くにいるはずである。外に置かれたソファーや室外機、また彫刻素材の下や裏などの隙間を探してみたが見つからなかった。諦めて帰ろうとした時、ふとワキモトさんの家のマグネットで閉じられた扉(写真の右下)をそっと開けてみた。
いた! 美大最終日に念願のワキモトさんにやっと会えたのだ。ワキモトさんは、かなり人に慣れていて、撫でると「ニャーニャー」鳴いていた。猫をあまり触ったことのないぼくでも簡単に撫でることができた。
帰り道、ワキモトさんについて教えてくれた学生とばったり会ったので、ワキモトさんに会えたこと、触れたこと、鳴いていたことを報告した。曰く、ワキモトさんが鳴いていたのはお腹が減っているからだそうだ。なるほど、と腑に落ちる。
2023-01-01