134)閑散とした観光都市
東山が閑散としている、と聞いたので、先日用事ついでに見てきた。平日の昼時とはいえ、想像していたとおり、人が少なかった。二番丁という目抜き通りの入り口付近のみ、人が集まっている様子で、お店に入っている人を含めても30人程度だろうか。そしてなによりも、約半数の店舗が休業していたことに驚いた。観光業は、観光客の多寡に強く依存しているので、一定の来客が見込めないと経営は非常に厳しいと思う。宿泊施設はもちろんのこと、土産物といった物販は(当該地域において)どこでも買えるが故に競争率は高いし、海鮮丼などを売りにする飲食店は食材の鮮度が求められるからだ。
その一方で、近江町は顧客対象を観光客から地元客に戻したことで人が戻ってきたと聞く。一見すると、東山と対称的であるが、その実は分からない。というのも、近江町は立地がとてもよく、東山と近江町を同列に語るのは難しいからだ。したがって、もし東山が地元客向けのサービスを展開しても、生活圏としての立地の悪さもあり、何かしら工夫がないと人は来なさそうだ。
金沢市といった観光都市は、他の産業を抑制することで成立している。産業の抑制とは、建築物の高さや色彩といった景観デザインの制限、また、観光地近くに歓楽街やオフィス街を設けない、といった地理的ものから、他の産業より優先して補助・出資するといった金銭的なものまで様々である。金沢市は、金沢駅から兼六園周辺までをシームレスに観光できるような街づくり目指しているように感じるが、これが今回裏目に出てしまったのだ。
観光都市が悪いといっているわけではない。ツーリズムという娯楽が制限された時、私たちはどうするのか。このアクチュアルな問題に向き合わなければならない、と言いたいのだ。そして今まさに現在進行形でツーリズムが制限されている。今週末の連休とGoToキャンペーンで一時的に観光客が来るかもしれない。しかし、それが与えるのは一時的な猶予と安堵であり、本質的な解決に導くものではないだろう。
2020-09-18