132)社会的変化をどう受容するか
ビフォアーコロナ、ウィズコロナ、アフターコロナ。これらの言葉の厳密な定義は知らないが、新型コロナと社会との関係性を表すものだ。この中でもアフターコロナとは、新型コロナがある程度収束した後に残った、社会的変化の痕跡を指しているようである。たとえば、コロナが終息したとしても、通勤してオフィスに出向くのではなく、自宅や施設でリモートワークを行う、といったものだ。
リモートワークいいじゃない、と思うかもしれないが、リモートワーク が不可能な職種も多くあるし、また、リモートワークに係る費用(場所や光熱費)を会社がしっかりと負担するのか、といった問題もある。そもそも顔を合わさずに仕事をできるものだろうか。というのも、顔を合わすことによって生まれる信頼もあるからだ。ぼくなんかは顔を合わせて仕事を貰うことが多い(サイトからの仕事もあるが)。
このようにアフターコロナは、コロナが終息した後も普通に仕事を続けられる、という希望的観測として盛り上がっている。しかし、ウィズコロナ、つまり現在はどうなのか、また、そもそもアフターコロナは本当に到来するのだろうか。もし、アフターコロナなどというものがあるとすれば、外食・興行・観光、といった産業が壊滅した状態ではないだろうか、と思うわけです。そして、それはすでに近い状態が到来しつつある、あるいは既に到来しているのではないか。
さて、事業には必ずランニングコストがかかる。ランニングコストとは、毎月必ず計上される固定された費用のことで、たとえば、家賃、光熱費、人件費などである。黒字にするならば、売上高がこの固定費と、商品等の仕入れである変動費との合計値を超過しなければならない。だが、コロナ禍の今、固定費すらまかなえていない業者も多くいるだろう。
(もし、家賃に係る経費だけで月に20万円(共益費・水光熱費込)かかるとしたら、少なくとも60万円以上の売上高がなければ、生活すらできないのではないだろうか。なお、これは概算であり、実際は変動費によって大きく異なってくる。)
いや、国が持続化給付金と家賃支援給付金を出してるじゃないか、と思う人もいるかも知れないが、焼け石に水である。持続化給付金も上限が少ない上に、家賃支援給付金はやっと振り込みが始まった段階である。いくらなんでも遅すぎでしょうよ。家賃支援補助は、法人に最大600万円、個人事業主に最大300万円を補助するが、月額の全額を支給するわけではなく、月額の2/3の半年間分である。支援が間に合わなかった業者もいるだろう。
とはいえ、帝国データバンクの「新型コロナウイルス関連倒産」を見る限り、多くの事業者が倒産しているわけではない。これは、給付金や無利子貸付といった延命措置が施されたからだろう(家賃が高額な事業は厳しいかも)。しかし、あくまでも延命でしかないのだ。そして、下請けとなる中小企業が中心に倒産しているのであれば、発注元の企業にもいつかは波及するだろう。すなわち、本質的な問題を解決しない限り、我々は常に死に直面しているのだ。新型コロナで潰れるようであれば、潰れた方がよい、という自己責任論も跋扈しているが、その想像力の乏しさには、感嘆するばかりである。
では、アフターコロナをどう受け止めるのか、と問われれば、もはや分からない。文字通り思いつきで色々とやってくれた政府は、新型コロナなどどこ吹く風で、総裁選挙に大忙しだ。
追記(2020-09-02):共同通信によると、新型コロナによる影響で、非正規の5万人が解雇されたようである(「コロナ解雇、8月末で5万人超に」47NEWS、2020年9月1日)。
2020-08-31