18)コンピュータと音楽(2)
前回に引き続いて思い出話です。
ぼくがDTMの「打ち込み」を意識したのはWindows98(SE)を使っていた中学生時代です。この頃のインターネットは(n10)MbyteのWAVE形式のオーディオファイルをダウンロードするのに数十分かかりました。そこで台頭したのが、MIDIと呼ばれる100kbyte程度の軽量な音楽ファイルです。
MIDI(Musical Instrument Digital Interface)は、音高、強度、音価、音色、速度といった様々な音楽情報を格納したファイルです。MIDIの再生は、ユーザ側の環境(音源モジュール等)に大きく依存されます。Windowsは標準でMicrosoft GS Wavetable SW Synth(通称:ゲイツシンセ)と呼ばれるチープなソフトウェア音源が用意されていました。MIDIをいい音で聴くにはROLAND「SC-8850」や、YAMAHA「MU-2000」といった高価な外部MIDI音源が必要でした。
外部MIDI音源といった高価なものを中学生だったぼくには手が出せません。そこで無料(?)のソフトウェア音源である、YAMAHA「S-YXG50(GM1)」やROLAND「VSC3.x(GM2)」を良くわからないまま使っていました。DAWも何かにバンドルされてきたであろう「Cakewalk」を良くわからないまま使っていました。当初は既存曲のメロディを打ち込んで遊んでいましたが、1998年に転機が訪れました。やねうらおが開発したフリーゲーム『BM98』の一大ムーブメントです。
『BM98』はKONAMI『Beatmania』を模倣した音楽ゲームです。このゲームがなぜ一大ムーブメントになったかというと、ユーザーが楽曲ファイル(BMS)を自由に制作し配布できたためです。BMS配布サイトでは、ポップスやロックのコピー曲、ゲーム・アニメの劇伴、北朝鮮の国歌(笑)から、BMSを利用したMADアニメ、オリジナル楽曲まで多種多様なジャンルの楽曲が公開されていました。これらの特に後者は、『BM98』に表現メディアとしての場や機能が色濃く表れたことを示しています。そこに僕も参画しようと画策するわけです。
BMSを作るなら、「オリジナル曲だ!」と行動しますが、全く上手く行きません。なぜならBMSは前述してきたMIDIではなく、WAVEによるオーディオファイルで構成するのが主流だったからです。だからMIDIで作った楽曲をオーディオファイルに変換する作業が必要なわけです。しかし、当時のDAWは現在のように「WAVE で書き出す」といった機能が非常に弱く、かなりの苦戦を強いられた記憶があります。また、オーディオファイルの容量を如何に小さくするかという課題もありました。結局、作曲能力の無さと、オーディオファイルの取扱能力の無さの二重苦で、一曲も完成することなく頓挫してしまいました(笑)。その後、2009年に「Cubase5」を購入するまで、コンピュータで音楽は殆ど作りませんでした。
前回、今回と「コンピュータと音楽」という題で書き綴ってきました。正確な題は「僕とコンピュータと音楽とゲーム」的なものです。こうして見てみると、「PC-9801RA」(1988)の頃から30年、『BM98』(1998)の頃から20年、「Cubase5」(2009)の頃から9年経っています。人間的にあまり成長しませんでしたが、トライアンドエラーで身につけたコンピュータ知識はかなりの武器になっていると思います。次の10年後にはどうなっているのか楽しみです。
2018-01-12