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金沢音楽制作

金沢音楽制作では、楽曲・楽譜の制作と、作曲や写譜などレッスンを行っています。


240)GEB

最も影響を受けた本、かは分からないが小学生の時に読んで感銘を受け、今の作曲スタイルの一要素になった本がある。それがホフスタッターの『ゲーデル,エッシャー,バッハあるいは不思議の輪』(白楊社、1985年)である(以下、GEB)。ちなみに、GEBの原著はリオタールの『ポストモダンの条件』と同じ1979年に出版されている。

GEBの内容について述べると、再帰構造といった自己参照を通して人間の認識について説明しているのだと思う。ふわっとした説明だけど、理解していないので仕方がない。じゃあ、この本のどこに影響を受けたのかといえば、全体に散りばめられたバッハの《音楽の捧げもの》、つまりカノンにである。それは、輪(無限)になっておりかつ自己参照的でありまたメタ的でもある。そして、後述するように必ずしも音楽の形を取っている訳ではない。

子供だったのぼくは、様々なカノンの技法とそれを自己言及した文章、そして本質が類似(あるいは相似)したエッシャーの絵にわくわくしていた。また、訳者の一人の柳瀬直樹のあとがき「ア苦労スティックな本や苦談戯」では(739頁)、最上段と最下段がそれぞれ横読みできるようになっており、それに気がついた時になんとも言えない感情が溢れたのを覚えている。どういうことかというと、あとがきの中に奥付が2声(文)の文字列の逆行カノンとして内包されているのである(文全体を見た時の右上から左上へと流れる文字と左下から右下へと流れる文字が点対称になっている)。

さて、この記事に併せて《螺旋カノン》を書いてみた(GEBでは、《樹懶(なまけもの)のカノン》や《諸調によるカノン》あるいは《無限に上昇するカノン》とも呼ばれている)。螺旋(=無限に上昇/下降)カノンとは、ハ短調から始まった曲がループしたとき、いつの間にかニ短調になっており、それがホ短調、嬰ヘ短調、嬰ト短調、変ロ短調と転調し、やがて(オクターブ上の)ハ短調に戻るという仕掛けが施されたカノンである。それはまるで、エッシャーの『上昇と下降』である。「カノンの書き方」に楽譜を載せたので、そちらを見ると、視覚的に分かりやすいと思う。

《螺旋カノン》

知人からエッシャーの図録をお借りしたので、25年ぶりに改めてGEBを読み始めた。しかし、ゲーデルに全く触れてこない通り、数学の素養がないので結局つまみ食いで終わりそうだ。

2022-11-11