169)左打ちに戻してください
大人になってからこんなに怒られたのは初めてかもしれない。
「左打ちに戻してください」、この台詞はパチンコでレバーを強く捻りすぎて、パチンコ玉が右のエリアに落下した場合に発せられる警告だ。この警告が大音量でホールに鳴り響くも、左打ちの意味が分からずあたふたとする。その場で検索して分かったことだが、パチンコ玉は基本的に左に落とすもので、右に落とすのはフィーバー(?)の時だけのようである。
さて、先日友人と社会勉強という名目でパチンコ屋に行ってきた。あいにくぼくたちはパチンコのやり方なんぞ皆目知らない。店員さんに「お金をどうやって玉にするんですか?」と聞いて、苦笑いされつつどうにか台に座った。
千円も使ってパチンコを遊んでみたが、これが驚くほど全く面白くない。そこに駆け引きやテクニックといったものは一切なく、激しく明滅するカラフル光と派手な演出の画面、そして大音量の音を浴びているだけである。ぼくたちは「もういいから、早く玉無くなってくれ」と思っていた。そして、確実に時間と金が失われ、徒労感だけが残った。
その空間で、ぼくたちは明らかに浮いていた。率直に言ってまともな人が見当たらない。それもそのはず、まともな思考をしていたらパチンコなんかしないだろう。仮に期待値が1だったとしても胴元が勝つのがギャンブルだ。なぜならば、打ち手には所持金という縛りがあり、所持金が枯渇すれば賭けに参加する権利を失うからだ。そしてパチンコの期待値はとても低く、その設定に従う他ないのだ。
さて、どうやら失うのは時間と金だけではないようだ。現東京医科歯科大学の精神行動医科学の高橋英彦教授が、ギャンブル依存症と脳の器質的な関係について次のような論文を発表している。「ギャンブル依存症の神経メカニズム―前頭葉の一部の活動や結合の低下でリスクの取り方の柔軟性に障害―」。この論文によれば、ギャンブル依存症の人は、前頭葉の背外側前頭前野と内側前頭前野の結合が弱いとのことである。また、背外側前頭前野の活動が低下していると適切なリスク管理ができなくなるという
前掲の論文とは逆に、パチンコをすることで脳が活性化し、認知症の予防になる、という意見もあるようだ。公立諏訪東京理科大学の脳神経科学の教授で一般社団法人日本遊技関連事業協会の理事も務める篠原菊紀教授は、パチンコは脳を刺激し、認知症の予防になるという(気になる人は自分で調べてください)。まず、認知症に予防なんてない。そんなことは門外漢のぼくでも知っている。まあそれが事実だったとして、わざわざパチンコを選択する理由はないだろう。
色々と書いたけど、ぼくたちにとって今回のパチンコは、とてもいい経験になった。というかさ、貴重な時間使ってパチンコしてるのなら、家で寝ながら読書や勉強でもして、知識や技能を身につけた方がいいですよ。パチンコに使った時間と金で、事業の二つ三つできたと思います。もし、金が欲しいのならアクティブファンドにでも打ち込んでください。パチンコよりは勝てると思いますよ。しらんけど。
2021-06-01