149)本のジャケ買い
地元の書店に足繁く通っている。その書店が好きな訳でも、これといって何かを買う訳でもない。しかし、突然みすず書房のフェアが開かれるので油断はできない。今回、野呂邦暢の随筆集『夕暮れの緑の光』を買ってしまった。野呂を知らないが、平明な文体と書名、そして装丁に惹かれた。つまり、ジャケ買いのようなものである。
書店といえば、かつて金沢駅前にあった駸々堂(しんしんどう)は好きだった。駅前の巨大なビルの1、2階をまるまる使った書店で、おそらく北陸で最大規模だったはずだ。どのような本が置いてあったのだろうか、しっかり見ておけばよかった、と後悔している。子供のぼくは、新旧が混交する漫画コーナーにばかりいってたのだ。これは以前書いた(「少年時代(A)」)。今となっては知る由もないことである。
他、覚えていることといえば、親が折口信夫の『死者の書』を買っていたこと位である。ジャケは、エジプトのセンネジェムの壁画で、アヌビスがミイラを作っている場面であった。好奇心で本を開くも、とても小学生が読める文体ではない。ぼくは早々と本を閉じ、ジャケ買いした藤子不二雄Aの『ぶきみな5週間』に読み耽るのであった。
2021-01-02