117)数字に騙されるな
未だにPCR検査を拡大するな、といっている連中はなんなのか。彼らの意見の論拠は、数学の確率にあるようだ。なんでも、数学的に検査は無意味なことが証明できるそうな(「〇〇の意味がないことを証明する」というのは数学の範囲ではないだろう)。では、その彼らのいう確率がどのようなものかを次で示したい。
罹患率1%を精度99%判定できる検査を1万人に実施するとどうなるか。概ねこのような問いが立脚点になっている。これをそのまま計算すると(実際はもっと細かいが)、9801人が陽性と判定される。しかし、真の陽性者は100人程度である。つまり、陽性と判断されてから、その更に約1%が真の陽性者となるのだ。したがって、陽性の約99%は偽であり、これを日本国民全員に検査をしたところで無意味であり、かつ医療崩壊が起きる。とこのようなロジックで検査の拡大を拒んでいるのである。
なるほど、陽性と診断されても、真に陽性なのは、そのグループのわずか1%にすぎないというわけだ。しかし、納得してはいけない(この確率自体は正しい)。まず、1%や99%という値はどこからきたのか。日本国民全員が検査を受けるという前提はなんなのか。そして、それが医療崩壊を引き起こすとはどういうことか。そもそも、医療崩壊とは何を指すのか。一切なにも説明されていないのだ。伝わるのは、政府の対応の遅さを数字で正当化している、ということだけである。
まず、1%と99%という二つの値は、本来は不明であり、過去の累積データから算出された値が代入されると考えるのが自然だ。それにも関わらず、今回は都合のよい値が用いられている。事実、説明する人によってこの値は異なっている(1%、0.1%、0.01%というパターンが多い)。この値は、年齢、性別、地域、健康状態など、様々な要因によって大きく変動するはずである。では、ここに入る値は何なのか、と問われれば、検査して調査するしかないのだ。すでにデータが揃っており、また感染もしないがん検査と同じように語ることは難しいだろう。
一口に検査といっても、そこには様々な要因や段階、そして目的がある。それを、都合のよい特定の部分を抜き出して、確率の計算結果から検査は無意味である、というのは暴論であろう。そして、そのようなもので他人を説得しようなど、学問の最も堕落した姿である。彼らに共通するのは、与えられた(既存の)問題しか解けない、というエリート主義に端を発する病だ。自ら問題を考え、そして思弁することができないのだ。大学でお勉強したことこそが本質でありその答えなのだろう。
なお、PCR検査とその精度については、日本疫学会の「新型コロナウイルス感染予防対策についてのQ&A」に分かりやすく書いてある。まあ、日本疫学会のアナウンスよりもTwitterやYoutubeで幅を利かせている(自分の思想を代弁してくれる)有名人の方がファクトなのである。
2020-05-01