作曲・指導・C言語・Linux

金沢音楽制作

金沢音楽制作では、楽曲・楽譜の制作と、作曲や写譜などレッスンを行っています。


113)没ゲームの思い出

2009年頃、Windows用のゲームの劇伴を書いたことがある。内容は『Wizardry』や『世界樹の迷宮』のように一人称視点で階層になったダンジョンを探索するものだ。ゲームに必要な美術や音楽といった素材はそれなりに揃いつつあったが、プログラミングの進捗が芳しくなく、ゲームが日の目を見ることはなかった。大規模なプログラムを一人でやっていたので仕方がなかったのかもしれない。

さて、そのゲームのために書いた曲がそれなりにあるので、「没ゲーム音楽集」として公開した。ここにあるのは、wavやoggとして書き出された、ある程度完成した曲が大半である(ライセンスの問題から圧縮形式は、mp3ではなくoggが使われる)。他にもデッサン状態のものもかなりあり、それらも公開したいが、ywsというヤマハの「SOL 2」というDAWの独自形式で保存されており、救出は少しめんどくさそうだ。

これらの曲は、楽しく書いた覚えがある。もともとゲームの劇伴を書きたかったのもあるが、思いついたメロディーをそのまま書くことが許されたからだ。近年、映画やゲームの劇伴を書くにあたって、主張は不必要である、という風潮がある(主張とは、メロディーのことを指していると思われる)。しかし、ビデオという複合的な表現にも関わらず、ある表現が別の表現のために忖度する、というのは、表現のよさや可能性を殺しているのではないか。

(たとえば、映画の『バットマン』(1989)と『ダークナイト』(2008)の音楽を比較しよう。前者は、主題として機能――作品を象徴――するメロディーをもっている。一方で後者は、アドホックな打楽器主体の紋切り型の音楽で一切印象に残らない。はっきり言えば、子供っぽい。)

このゲームが完成していたならば、と思うことがある。ゲーム音楽としてのクオリティが高い、と思うほど自惚れていないが、卑下するほど低くもないだろう(粗製乱造されたゲーム音楽よりはよいと思っている)。それに、ゲーム作品として相乗的な評価もされた可能性がある。まあ、多少なりのチャンスには繋がったのではないだろうか。機会があればまたゲームの劇伴を書きたいものだ。

2020-04-01