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金沢音楽制作

金沢音楽制作では、楽曲・楽譜の制作と、作曲や写譜などレッスンを行っています。


92)楽譜コンクール

若いうちに作曲コンクールに出して賞を取っておかないといけない。これはある人に言われた言葉である。しかし、これは勘違いであるので、作曲コンクールについて少し書いておきたい。

作曲コンクールは、一般的なピアノ等演奏による音楽コンクールと異なる様相を呈している。たとえば、ショパン国際ピアノコンクールは、実演奏を、つまり音楽を聞いて審査している。一方で、作曲コンクールは音楽を聞かずに審査するのだ(!)。ではどうするのかと言うと、楽譜のみを見て審査するのである。つまり、作曲コンクールとは、楽譜のコンクールなのである。したがって、作曲コンクールと一般的な音楽コンクールを同列で語ることは難しい。(最近では、譜面だけではなく、演奏審査もあるようだが、それはそれで金持ちしか参加できない)

では、楽譜で審査する、ということはどういうことか。それは、譜ヅラがよく、どんな音なのか演奏を聞いてみたい、と思わせる楽譜が入選するものである。譜ヅラとは、楽譜の見た目のかっこよさのことだ。アーティキュレーションや特殊奏法をふんだんに取り入れ、それを細かく記述し、一見するだけではどのような音が鳴るか想像できないものが、一般的に譜ヅラがよい、とされている。逆に言えば、頭の中で音を鳴らしやすい古典〜ロマン派のような楽譜は選考から落ちるのである。たとえば、作曲家の吉松隆は作曲コンクールに応募し続けたが、殆どが落選した。要するに、音楽の良さなど見ていない訳だ。

というわけで、ぼくが作曲コンクールに応募することは今のところなさそうだ。そもそも、コンクールに受賞したところで、それを自慢げにプロフィールに書く趣味はない。それは、論文投稿数や出版数を自慢するのと同じくらい無意味なことだからだ。ただ、唯一ぼくが応募する可能性があるものとして、電子音響音楽コンクールがある。電子音響音楽のコンクールは、完全に再生される音楽だけで判断される、非常に健全な作曲コンクールだからだ。電子音響音楽の作品がいくつかあるので、折を見て公開したい。

2019-11-05