65)記憶と場所の関係性
Amazonで、桑木野幸司『記憶術全史――ムネモシュネの饗宴』(2019)という本がおすすめに出てきた(購入はしていない)。キャプションに「スマホをアップデートしたら、画面がガラッと変わって、お目当てのアプリや写真がどこにあるのか分からなくなった……そんな経験を思い出せば、「記憶」は「場所」と結びついていることが分かる。」と記されている。これを読んで(これしか読まずに)、やっぱりなー、と思った。
以前から特定の音楽を聞くとある特定の場所を思い出すことがあった。たとえば、バッハの《トッカータとフーガニ短調 BWV565》を聞く(思い出す)と、なぜか空間的に配置された大手堀(金沢城址の堀の一つ)が思い出される。さらに当曲は贋作である、という付加情報も遅れてやってくる。大手堀でバッハを聞いた、という記憶がないにもかかわらずだ(あるとすれば車の運転中か)。
だが、音楽と場所が相互に紐帯されているかというとそうでもない。音楽から場所を思い出すことはあっても、場所から音楽を思い出すことはないからだ。なんとなくであるがこの感覚は〈夢〉の記憶に近いのではないか、と思う。僕だけかも知れないが、夢でみた出来事の記憶は消えやすいが、その空間(場)はなんとなく思い出せるのだ。もちろん、夢をみたことを覚えていればの話である。何れにせよ、答えは分からない。となると前掲書を読んでみるのも悪くないかもしれない。
2019-04-11