53)『別世界』のアナリーゼ
今まで参考音源のみを公開していた「楳図かずお『別世界』における楽譜のアナリーゼ」の全文を公開しました。初出は『ビランジ』40号(2017年)です。まともに文章を書いたのは初めてでしたが、金沢美術工芸大学の高橋明彦さん(国文学)に添削して頂いたので良い形になりました(ちなみに料亭でご飯までおごって貰いました笑)。ぜひ一読ください。
本論は漫画の中に現れた楽譜を分析したものです。映画やゲームといった映像と音響に焦点を当てた論は見かけますが、漫画に焦点を当てたものは珍しいと思います。そして、分析だけなら自分の論考の方がより具体的に切り込めていると思います。というのも、自身が作曲ができる、というのが楽曲分析に有利に働いていると考えているからです。なぜなら外側からの観測だけではなく内側から、つまり作曲家の視座からの観測が可能だからです(もちろん、絶対の条件ではありませんが)。
実は後日談として、楳図かずお先生から『別世界』の楽曲に関して書かれたハガキが届きました(高橋明彦さん宛)。楳図かずお先生によれば、「音楽についてはコード進行などあるのは知っていますが具体的には知っていないので総て音を出してその感じで曲を作っています。」とのことです。それ以上の詳細はインタビューをしないと分かりませんが、少なくとも『別世界』の執筆時には作曲して五線譜として記譜するだけの能力を有していたことは間違いありません。その凄さを知るためにも一読ください。
現在、新しい論考を思索しています。しかし、今回のように漫画作品に現れるオリジナルの楽譜については、他に取り挙げるべき作品を知らず、書くべきことが特に思いつきません(ゲーム音楽については論の展開が可能なので、機会があれば書いてみようと思います)。そこで目下、音楽とは(あまり)関係がないカルチャーについて考えています。
2018-12-25