レポートの難易度とコツ
ここでは、芸通のレポート課題の難易度とレポートを書くコツとして、パラグラフ・ライティングについて述べます。レポートを書いたことがない、という人が対象です。そして、A評価がとれることを保証するものではありません。
多くの科目では、4つのレポート課題を提出します。文字数は、1,600字がほとんどですが、少数ながら4,000字や800字といった課題もあります。文字数が多い課題は一見大変そうですが、書いてみると自然とその文字数に落ち着くので、あまり心配しなくて大丈夫です(もちろん時間はかかりますが)。
レポートの難易度
基本的に優しいと思います。筆者が3〜4年次頃は、レポートのコツが何となくわかり、誤字脱字だらけの粗製乱造したレポートを数多く提出しましたが、そんないい加減なレポートでも大半がB評価でした。ただし、厳しいと言われる科目もあります。それらに関しては「厳しい科目について」にて述べています。
レポート課題には、大きく2種類の系統があります。1つは、テキストや参考文献の内容を自分なりに纏めるもの。もう1つは、自分で主題を設定しその結論を導き出すものです。統計を取った訳ではありませんが、総合や共通、専門は後者が多かった印象があります。一方で、資格課程はほぼ前者だったと思います。ぼくはテキスト読むのは苦痛だったので、辛かったです。
レポートの書き方のコツ
はじめに
レポートの書き方のコツについて述べる。レポートを書くコツは、各項に付けられた見出しとトピックセンテンスを正しく設定することである。そして、各項から導き出された結論を材料に、最終的な結論を導き出す。しかし、レポートを書いたことが無い人のためにも、もう少し遡って、まずはレポートの文体から述べたい。その上でパラグラフやセンテンスといった、レポート作成のテクニックを自己参照的に紹介する。
レポートの文体
レポートの文体は、2つの要素から構成されている。1つは、文末表現を常体に統一すること。他方は、短いセンテンスの連なりで段落を表現することである。
文末表現を常体に統一するとは、新聞記事で見かける「だ・である調」を用いることである。敬体と呼ばれる「です・ます調」は、レポートでは基本的に用いない。なぜなら、常体の方が断定的であり、論点が明確になるからだ。
センテンスとは、句点で区切られた文章のことである。「短い」という形容詞が付いていたが、この「短い」の意味は、取り扱う内容が1つであることを指す。たとえば、肯定意見と否定意見を同時に書いてしまった場合、それは短いセンテンスとは言えない。そんな場合は、一度句点で終わり「しかし」といった接続詞から再びセンテンスを始めればよい。
レポートの目的は、読者に正しく情報を伝えることである。そのためにも、常体や短いセンテンスを意識した文体をもって記述し、読者の負担をへらす責務がある。別の表現をするならば、ななめ読みされたとしても誤読が発生しない文章である。
見出しは明確に
見出し(=項)は、レポート全体あるいはその項で何が書かれているかを読者に端的に示すものである。抽象的になりやすいが、筋が通るようにする。本見出しの「見出しは明確に」には、続く言葉がないが、前後の流れから肯定であると分かる。もし、否定にするならば「見出しは明確にしない」と明示的に宣言する。
レポートに最小の見出しを付けるならば、序論・本論・結論の3つである。これは、単に全体を3つに分解しただけでなく、レポートの構造を表すものである。実際は、本論とせずに具体的な命名がされた見出しを複数設置することが多い。
さて、見出しが付けたられた項をよく読むと、その中で小さな「序論・本論・結論」で構成されていることが分かる。つまり、レポートはそれぞれの項の小さな結論から全体の結論が導きだされるのである。
パラグラフとセンテンスの関係
パラグラフとは、ある話題(トピック)を論理的に展開した段落のことである。論理的な構成とは、トピックの結論を、演繹的あるいは機能法的な展開から導くものである。つまり、パラグラフ自体もまた小さなレポートのような構造を持っている。
1つのパラグラフは、1つの主題を持つ。複数の主題を持たないように意識する。主題をより明確にするため、パラグラフの先頭には、トピックセンテンスと呼ばれる文を配置する。トピックセンテンスは、その段落で何を書くのかを明確に示す文である。これから書く内容でもいいし、もちろん結論でもいい。
まとめると、パラグラフは1つの話題を持ち、論理的に展開された後、何かしらの結論を提示するもの、といえる。実際は、結論がでない場合もあるが、その結論がでなかった、という事そのものが結論となる。そして、その結論は、最終的な結論の材料となり得るものである。
おわりに
見出しとトピックセンテンスを軸に、レポートの書き方のコツを見てきた。今回は、レポートの骨組みを作り、そこに肉を付けていく手法を書いた。この手法は、パラグラフ・ライティングと呼ばれている。しかし、パラグラフ・ライティングは、あくまでも型である。レポートの質を保証するものではない。よいレポートは、よい文章を沢山読み、自分の文章と比較して何が違うのかを知るところから始まるものである。
1,550字
テーマをどう切るか
レポート課題では、抽象的で漠然としたテーマが与えられることが殆どです。抽象的なテーマとは、「音とは何か」のように、広義であり根源的でもあり哲学的な問いのことです。そんな抽象的なテーマをどう料理するのか(できるのかを)考えてみます。
今回は、結論から考えてみます。結論から考えるなんておかしい気もしますが、問題ありません。論考の中でそれが違うのであれば、「違った」という結論が得られますし、もっとよい結論が出てくるかもしれません。たとえば、「まず、結論を考えることにした。そしてそれを検証し、改めて結論を出したい」と最初に書いておけばよいのです。このような手法を帰納法といいます(逆は演繹法)。
「音とは何か」を、耳に入ってくる何かしらの意味を持ったもの、と結論づけてみます。この時の結論をよく見ると、少なくとも2つの現象が扱われていることが分かります。1つは、耳に入ってくる、という物理的(振動)な現象です。もう1つは、意味を持った、という文化的(記号)な現象です。この2つの現象が切り口になりそうです。
2つの切り口をどういう割合にするかは自由ですが、文字数が限られているので重要な方を優先します。文系科目であれば、一般的に理系的な内容は基本的に求められていません。というわけで、文化的な側面に着目します。その場合は、「今回は、音がもつ意味の構造に着目したい」と宣言します。この時重要となるのが、「構造に」と、より論点を絞ることです。ここでいう構造とは、ソシュールに始まる記号論のことですが、専門知識や用語は不要です。その現象を日本語で論述します。
方向性が決まってきました。ここまで来たらレポートの骨格ができました。あとは、音が意味をもつ、とはどういうことかを書くことで肉をつけていきます。たとえば解釈の1つとして、踏切音であれば、今電車が通っていて踏切が下がり道路が遮断されていることを表します。一方で、他者に「すみません」と言った場合は、謝罪/そこ通ります/ありがとうございます、と状況によって無数の意味が発生します。さらに言えば、日本語話者同士に限定されます。
このような考えに、深みや説得力を持たせ方向を安定させるのが文献です。自身の思考や経験だけだと、どうしても偏った内容になりがちです。文献は、反対意見も含め複数あった方が好ましいです。文献は、必ずしも論文や書籍である必要はありません。たとえば、NHKラジオの『子ども科学電話相談』で「外国のネコと日本のネコはお話ができますか?」(2022年7月10日)というテーマが放送されました。これでもレポートの文献としては問題ないでしょう(論文だと問題ですが)。
最後にまとめます。まず、漠然としたテーマを具体的なテーマまで落とし込みます。この作業でレポートの質が決まるといっても過言ではありません。つぎに、自分が書きたいテーマが決まったら、複数の要素から結論をもとめる演繹法あるいは結論から要素を考えていき帰納法を使って論述します。そして、その論述が独自研究に偏らないように、適宜文献に当たって修正したり引用したりすることで質を高めます。文系科目でも論理的であること(=飛躍がない)を心がけてください。