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金沢音楽制作

金沢音楽制作では、楽曲・楽譜の制作と、作曲や写譜などレッスンを行っています。

学習フーガについて

クラシックの作曲の勉強をしていると、「学習フーガ」という言葉を目にすることがありす。しかし、学習フーガに関する情報は和声や対位法と比較すると少なく、その全体像は掴みづらいと思います(2017年現在、学習フーガについてのページは増えています)。

このページでは、学習フーガを次の三つの要点を絞って解説します。フーガと学習フーガとは何か、学習フーガの作例、フーガに関する書籍の紹介、です。(フーガの書き方については、筆者の能力で説明が困難です。)

フーガと学習フーガ

フーガとは

フーガとは、主題が継起的に複数の声部で登場する、対位法的書法によって書かれた曲を指します。フーガは、主として三つの部分で構成されています。まず主題が提示される「提示部」、つぎに提示部と提示部をつなぐ「嬉遊部」、そして主題が終わる前に次の主題が演奏される「追迫部(ストレッタ)」です。

しかし、実際のフーガでは、提示部と嬉遊部のみで構成しているものも数多くあります。たとえば、バッハの《インヴェンション》第1番もフーガと見ることができます。

学習フーガとは

学習フーガ(仏:La fugue d'ecole)とは、パリ音楽院における書法(和声・対位法・フーガ)の一つとして19世紀に導入された、構造があらかじめ決定されたフーガです。三つの提示部と二つの嬉遊部、そして追迫部で構成されています。また、転調先や主題の現れる順序(外側に向かって)も概ね決まっているのも特徴の一つです。

なお、東京芸術大学作曲科の受験二日目には「対位法楽曲:300分 つぎの主題によって、2声部以上の対位法的楽曲を作れ。」という、実質、学習フーガを書く問題がありました。しかし、2013年度に対位法とコラールの問題に変更されています。というのも、学習フーガは対位法をよく知らなくても、和声法で書けてしまうからです。特に、島岡譲の『フーガの実習』(1984)では、機能和声を重視した内容になっています。後掲する学習フーガの作例も、機能和声を重視しており、バス課題の実施に近いものです。

学習フーガの作例

シャルル・グノー(1818-1893)の主題による学習フーガの作例です。この主題は、1882年のローマ大賞(le Grand Prix de Rome)で出題され、ドビュッシーもこの主題でフーガを書いています。

グノー主題

下掲する学習フーガの作例は、島岡譲『フーガの実習』を片手に書いたものです。しっかりと学習した人と比較するとかなり拙いものです。全体的に旋律が続いたゴツゴツした響きで風通しがよくありません。もっと大胆に休符を取り入れて、どこが提示部なのか、はっきりとさせた方がよいです。色々と書きましたが、学習フーガは一曲だけでも書いてみるとよい経験になると思います。

追記(2020年5月24日):あまりにゴツゴツしているかつ不良箇所があったので、気がついた範囲で修正しました。また、声部を聞き分けやすいように、音色を変更しました。しかし、あらためて聞いてみると、主題をあまり利用せずにソプラノが旋律を歌いすぎですね。学習フーガとしてぎりぎり体裁を保っている気もしますが、まあ熟練者でない人が書いた学習フーガの作例です。逆に言えば(?)、独習でもこの程度は書ける、ということでしょう。よい作例は、フーガの本に沢山載っています。

学習フーガの作例p1 学習フーガの作例p2 学習フーガの作例p3 学習フーガの作例p4 学習フーガの作例p5

フーガのテキスト(2017)

フーガを扱ったテキストは意外と豊富ですが、その中には絶版も多く含まれています。日本で入手が容易なものとして、山口博史の『フーガ書法』(2016)と島岡譲の『フーガの実習』(1984)があげられます。おそらくこの二冊が学習によく使われているのではないでしょうか。

重版のもの

  1. イェッペセン『対位法 パレストリーナ様式の歴史と実習』柴田南雄・皆川達夫訳、音楽之友社、2013年
  2. 柏木俊夫『改定増補 二声対位法 基礎からフーガまで 付 装飾法と通奏低音』東京コレギウム、2013年
  3. ケルビーニ『対位法とフーガ講座』小鍛冶邦隆訳、アルテスパブリッシング、2013年
  4. 島岡譲『フーガの実習』国立音楽大学、1984年
  5. 野田暉行『Fugue 新版組・増補版』E World Japan、2003年
  6. 野田暉行『Fugue 付録』E World Japan、2010年
  7. 長谷川良夫『対位法』音楽之友社、1955年
  8. ビッチ、ボンフィス『フーガ』池内友次郎訳、文庫クセジュ、1986年
  9. モラール『ライプツィヒへの旅 バッハ=フーガの探求』余田安広訳、春秋社、2013年
  10. 山口博史『フーガ書法』音楽之友社、2016年

絶版のもの

  1. 池内友次郎『学習追走曲』音楽之友社、1977年
  2. デュプレ,マルセル『対位法とフューグ』池内友次郎訳、東京教育出版、1957年
  3. 島岡譲『音楽の理論と実習 III』音楽之友社、1986年
  4. 島岡譲『音楽の理論と実習 別巻III 上』音楽之友社、1986年
  5. 島岡譲『音楽の理論と実習 別巻III 下』音楽之友社、1986年
  6. 福本正『フーガの研究』音楽之友社、1966年
  7. 諸井三郎『楽式の研究II フーガ』音楽之友社、1961年
  8. ヤダスゾーン『カノンとフーガ(典則曲および遁走曲教程)』戸田邦雄訳、音楽之友社、1952年

洋書のもの

  1. Bitsch, et Bonfiles. La Fugue. Parism, Combre, 1993.
  2. Dubois, Theodor. Traite de Contrepoint et de Fugue. Paris, Heugel, 1901.
  3. Dupre, Marcel. Cours Complete de Fugue. Paris, Leduc, 1938.
  4. Gedalge, Andre. Traite de la Fugue. Pairs, Enoch, 1904.
  5. Mann, Alfred. The Study of Fugue. New York, W.W.Norton.
  6. Merlet, Michel. Fiche Analytique: pour une Description Rationnelle de la Fugue. Paris, Leduc.
  7. Richter, Ernst Friedrich. A Treatise on Canon and Fugue: Including the Study of Imitation. Arthur W.Foote(ed.), Boston, O.Ditson, 1888.

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