85)スラーを描くこと
久しぶりに写譜ペンを使って楽譜を書いている。楽譜を書く時の一番の難関は、スラーを描くことである。スラーを綺麗に描くことは難しく、線が太くなったり、途中でぶれたりするなど、常に緊張感がある。だが、最終的にpdfにするので、失敗したところで画像編集ソフトを使って、他の線と合成あるいは修正することができるので気は楽である。ところで、漫画を描ける人はやはりスラーを描くのも上手いのだろうか、ちょっと気になっている。
鉛筆やシャープペンでスラーを描くときのコツは、目的の方向に直線的に伸ばすことだ。つまり、丸い弧を描くことにあまり囚われてれはいけない。曲線は終始位置だけで、中心部は直線的に描くとそれなりに綺麗に描ける。また、スラーがどうしても苦手な場合は、もっと確実な方法として、曲線の集合で構成された「雲形定規」や自由な形を構成できる「自在曲線定規」を使うなどがある。とはいえ、楽譜は綺麗に書くことが第一の目的ではない。読みやすくレイアウトすることが最も重要な使命である。
一般的にパート譜は、統一感を出すために一本の写譜ペンで書くが、スラーといった線や音楽記号を細い写譜ペンで描いてあるものも見かける。一方で、スコア譜(総譜)は、スラーといった演奏記号全般を細い万年筆(F程度)で書いてあるものが多い。おそらくパート譜とスコア譜では描く作法が違うのだろう。全音のスタディスコアには手書きのものが多いので興味がある人は確認してみてほしい。ぼくが持っている手書き浄書の楽譜で最も読みやすいのは、『原博――交響曲』(1987)である。スラーは細い万年筆で書いているが、中心部が肉厚になるように線重ねているようだ。
ところで、Stainbergから発売している楽譜浄書ソフトのDoricoのバージョンが3になった。しかし、相変わらず実用性は低いとの噂を聞く。Finaleもそうだが、DAW的な機能の充実が足を引っ張っている。しかし、いきなりFinaleで作曲するのはもはや普通のことであるから、DAW的な機能の充実が求められているのも確かであり、なかなか難しい問題だ。なお、なぜかDoricoにはCubaseとの連携機能がない。
2019-09-15